第2回定例議会での一般質問「新教育委員制度と教科書採択について」

 

平成27年第2定例議会 529

議長 23

自民・無所属・維新クラブの一員として「新教育委員会制度と教科書採択について」一般質問致します。

杉並区の子供たちの使う教科書については、何度も質問しておりますが、教育委員会の制度変更もあり、8月には、4年に一度実施される教科書採択がありますので、改めてお伺いいたします。

第一次安倍内閣で、自民党の結党の綱領の一つである「教育基本法」が改正され、教育基本法には、「公共の精神を尊ぶことや豊かな情操と道徳心を培うこと、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと も入り、(家庭教育)や(幼児期の教育)も新たに加わりました。

それにともない、学習指導要領も改正され、次代の日本を担う子供たちの教育方針が、少しずつ正常になってきたことは、大変喜ばしい事です。

第二次安部内閣では、総理直属の教育再生実行会議が発足され、人づくりは、国づくり ということで、教育改革に力を入れており 教育委員会制度も変化してきました。

平成274月に施行された「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」には、

教育委員長と教育長を一本化した新教育長の設置や、教育委員会会議の透明化、首長と教育委員会が協議調整する「総合教育会議」の設置、また、教育に関する「大綱」を首長が策定する事になっています。

この法律には、「何か問題が起こった時には、常勤の教育長が第一義的な責任者として迅速に対応することになります」とあります。

これまでは、5人の教育委員会の中に、「長」とつく名の人が二人いるので、どちらが第一義的な責任者なのかわかりづらかったのですが、この法律によって責任者が明確になり、すっきりした感じは致しますが、

1、これまでの教育委員会での教育長と 新制度における教育長とでは、何がどう違うのか、また、教育長の権限が大きくなることについても、区民に解るように具体的にお示し下さい。(庶務課)

新制度では、区長が、主宰する「総合教育会議」が設けられるとのことで、杉並区では、514日に「総合教育会議」が開催されています。

2、総合教育会議では、大綱についても 話し合われており、協議の結果、「杉並区教育ビジョン2012」を大綱にしたとの事ですが、どのような経緯でそうなったのでしょうかお伺いいたします。(総務課)

この「杉並区教育ビジョン2012」には、家庭教育の充実とはありますが、家族や家庭を大切にするという事についてあまり触れられておりません。

 

教育委員会制度が新しくなったわけですから、教育ビジョンをもっと掘り下げて 新 しい「大綱」をつくるべきではなかったのでしょうか。残念です。

新教育長が決まり、本年は、新制度の元で教科書採択が行われることになりますが、総合教育会議は、その名のとおり、次代を担う子供たちの教育を協議・調整することにより、教育政策の方向性を共有し より良い教育をするための会議です。

したがって、当然、教科書採択についての文言があると思っておりました。

ところが、「この法律」では、総合教育会議の留意事項の3に「総合教育会議においては、教育委員会制度を設けた趣旨に鑑み、教科書採択、個別の教職員人事等、特に 政治的中立性の要請が高い事項については、協議題とするべきではないこと。   とありました。

確かに、教育は、政治的には中立でなければなりませんが、子供たちは、学校で教科書を基に学習するわけですから、どの教科書を選ぶという事は、重要な事です。

この法律の、その4には、

「一方、教科書採択の方針、教職員の人事の基準については、予算等の地方公共団体の長の権限に関わらない事項であり、調整の対象にはならないものの、協議することは考えられるものであること」とあります。

この 3と4との意味が良く理解できませんでしたので、文科省にお聞きしましたら、丁寧に説明して下さいました。

会議では、教科書採択については、A社が良いB社が良いという事ではなく、採択の方針につては、協議しても良いとの事でした。

そこでお聞きいたしますが、

3、教科書採択における区長及び教育長の方針をお聞かせ下さい。(済美教育センター、総務課)

教育委員会制度の元での初めての教科書採択となりますが、

4、今後、教科書採択はどのような手順で行われるのかお伺いいたします(済美教育センター)

「教科書の調査研究については,必要な専門性を有し,公正・公平に教科書の調査研究を行うことのできる調査員等を選任し,」とありますが、

5、教科書の調査研究の専門の調査員とは、はどのような人が選ばれているのでしょうか、また、誰が選んでいるのでしょうか。お伺い致します。(済美教育センター)

4年前の採択時には、教科書を区民が読むことの出来る教科書展示会がありました。

教科書の発行に関する臨時措置法 第5条による 教科書展示会の開始の時期及び期間は,619日から14日間とあり、法定展示期間外であっても,教科書見本がそろい次第,教科書展示会を開催することは可能である とあります。

また、教科書展示会の開催時期・場所等について,教員,教育関係者はもとより保護者等 広く一般にも積極的に周知を図ること。とありますが、そこで

6、教科書展示会の開催期間及び区民等への周知の方法についてお伺いいたします。また、区民の意見はどのように反映されるのかもお伺いいたします。加えて、以前のように採択の様子を傍聴することができるかをもお伺い致します。(済美教育センター)

公立の学校において使用される教科書の 採択権限を有する者は 教育委員会であり,教科書見本は 基本的に教育委員会の教育長及び委員の人数分が送付されることになっていますが、文科省調査では、採択前に教科書の見本を教育委員の自宅などに送っている教育委員会は、13%にとどまっているとのことです。

杉並区では、これまでも教育委員にしっかり送られているとお聞きしておりますし、その教科書を読む期間は、50日ぐらいとお聞きしております。

限られた日数の中で、全ての教科書を読むことは、大変な作業であると思いますが、今後、4年間子供たちが使う教科書ですので、ぜひ読み込んで頂きたいと思っております。

今回、質問するにあたって、改めて 4年前の教科書採択の委員会の議事録を読み直してみました。

5人の教育委員がしっかり教科書を読みこんで決定して下さっている様子がわかる内容の濃い採択の教育委員会でした。

おおむね、教育長の発言は、公平であり、特定の教科書を誘導するような意見は、ありませんでしたが、委員長は、英語が専門なのでしょうか、英語に関して一社を誘導する発言がみられました。

今回、採択の対象になる教科書をまだ読んではおりませんので、何とも言えませんが、前回は、地理では、領土問題で竹島の記述のない教科書が採択されておりましたのが気になる所です。

日本は、海に囲まれていますので、領土という感覚が育ちにくいのかも知れません。どこまでが日本の国の領土なのか答えられない大学生が多いとの報道もありましたが、日本の領土が どこからどこまでなのか、どのような歴史があるのかぐらいは知って欲しいものです。

義務教育の時に、領土については、しっかり教えて頂きたいと思います。

下村文科大臣は、領土の記述について、これは、竹島ではなく尖閣についてではありますが、記述がある教科書についても「子供たちが中国や台湾の主張に対し議論や反論もできないような程度の記述しかない」として、学習指導要領解説書に明記して全教科書に詳しく記述させ、政府見解に沿った正しい知識を教えていく必要がある との認識を示した。との事です。

今回検定を通った教科書には、どう記述されているか楽しみでもあり 気になるところでもあります。

歴史教科書に関しては、多くの立派な意見がかわされておりましたが、ある委員は、「賛否両論はっきり分けたものをあえて使わなくてもいい。他にも 教科書として、一番これがいいというのではないかも知れないけれども、これを使ってもいいんじゃないのかという教科書が他にもあるのであれば、あえてこれを選ばなくてもいいのではないかという気がする。」とあり、「意見が多々ある教科書をあえて選ぶ必要があるのかな、もっと無難なところで選んで行ってもいいのかな」という発言もありました。

さすがに、この意見に対して 教育長は、「一番良いと思ったものを選ぶのであって、無難だからというのは違う」と、指摘していましたが、賛否両論とか 無難という言葉が飛び出してくるということは、教科書の中身ではなく、その他の 外野の情報に左右されているということです。

教科書会社の名前を伏せてから採択すれば公平なのにと思ってしまいます。

歴史教育は、自分を産み育ててくれた 親や先祖、そして、地域や 生まれた国の歴史への 感謝を育てる教育であり、先祖を見つめ 自分を見つめる教育でもありますから、他の教科とは少し違います。

昭和の初めに、駐日フランス大使であった ポール・クローデル氏は、フランスに戻ってから「私がどうしても滅びて欲しくない一つの民族がある。それは、日本人だ。日本人は、貧しい。しかし、高貴である」と演説されたそうです。

現代は、だいぶ様相が異なってしまい、恥ずかしい気が致します。

全ての教科書が、文部科学省の検定を通った教科書ではありますが、それでも記述の違いは、あります。

歴史教科書については、杉並区の子供たちが自分の国の歴史や文化に誇りと興味が持てるような内容か、十分見極めて採択して頂きたいものです。

家庭科教科書に関しての、採択の様子には、物足りなさを感じました。

家庭科は、生きる力を育む教科でもあります。

委員から食の充実についての意見は、ありましたが、家族についての記述の意見交換はなく、あまり関心がないのか 簡単に決まってしまっています。

家庭科の教科書には、家族という概念がかけている教科書もあります。

中学校の学習指導要領では、「自己と家庭、家庭と社会とのつながり を重視するとありますし少子高齢化や家庭の機能が十分に果たされていない といった状況に対応し、家族と家庭に関する教育と 子育て理解のための体験や 高齢者との交流を重視する。」等々、とあります。

これまで、日本人は、信仰も 歴史観も道徳も 社会のあり方も「家」を単位にしてきました。心のよりどころや生き方の中心が 家庭にありました。

家に電話が一つしかなかった時代は、子供たちの友人関係もしっかり親が把握していましたが、個人で電話が使えるようになり、家族の絆も 薄らいでしまいました。

だからこそ、家庭科の教科書の内容も 家庭や家族の絆の暖かさを感じられるような教材であって欲しいものです。

今回の教科書検定で 内容は、変化しているかもしれませんが、

今回の採択では、食育だけではなく、家族や家庭を大切にする。少子化対策にも気を使った家庭科教科書を採択して欲しいと 願っています。

7、今回の歴史教科書や家庭科教科書の採択に対しての教育長の見解をお伺いいたします。(済美教育センター)

平成2734日には、学校における補助教材の適切な取扱いについての通知もあります。

平成15年の予算委員会だったでしょうか、資料請求で、中学校の歴史のテストと模範解答を頂いたことが、ありましたが、頂いた資料を見て愕然とした事がありました。

手作りの補助教材を作っておられた とても熱心な先生だっただけに 大変残念でしたが、その後、そのような補助教材を使っているという話は聞きませんので、杉並区は、問題がない とは思いますが、念のため お聞きいたします。

8、学習指導要領を逸脱した 補助教材使用の報道がありましたが、杉並区の状況はいかがでしょうか?また、この通知を受けて具体的にどのように対応したのかをお伺い致します。(済美教育センター)

いずれに致しましても、教育基本法や 学習指導要領の内容を遵守した教科書を採択し、杉並区の子供たちの手に渡したいと願っています。

子供たちには、教科書を使っての授業も大切ですが、どんな先生に教えて頂いたかは、もっと大事です。

ノーベル賞を受賞された、小柴先生は。「小さいころは、あまり理科が好きではなかったが、中学の理科の先生と出会って 好きになった」と言っておられました。

子供たちは、先生の人間性に 大いに影響を受けて成長しますので、教師の指導力に関してもぜひ力を入れて頂きたいものです。

子供を守るのは、大人の責任であり、子供の心を伸ばすのも 大人がやらねばならない事です。

毎日、新聞を広げると、子供を虐待する親、親を殺す少年、殺した、埋めた、捨てたといった事件があり、死というものが いったい何なのか解っているのだろうかと思うような事件ばかりです。

余りにも事件が多く、少し前の事件は、忘れ去られていきますが、どの記事を見ても被害者が、どんな恐怖の時間を過ごしたのか と思うと胸が痛くなります、

そしてまた、加害者についても、どうしてそうなってしまったのか と思うと心が重くなります。

彼らは、どんな環境で育ってきたのでしょうか。彼らも大きな意味では、社会の被害者ではないかと思います。

この世に生を受けたからには、使命天命があるはずです。

全ての子供たちが、幸せであって欲しい、子供たちが使命天命を全うできるような暖かい社会になって欲しい、切にそう願いながら 質問を終わらせて頂きます。

 

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